平安神宮や京都市動物園が立ち並ぶ 岡崎 のすぐ近くに建つ
宿泊施設「京都トラベラーズ・イン」。
カフェスペース・トイレ・階段など、
至る所に壁画を制作させていただいています。
こちらのオーナー 中川様 にインタビューしました。
先生との運命的な出会いや、
壁画を通じて広がっていく人とのつながり――
読み応えのある記事となりました。
Ki-Yan先生の作品を初めて見たのは、2012年か2013年頃。
寺町今出川を少し下がった東側にあったコインパーキングでのことでした。
’踊る象(dancing elephant)’の躍動感溢れるハッピーで赤い象達と、
その横に書かれたkiyan.comのアドレス。
しばらくは、私個人の、京都7不思議の一つでした。
というのは、何度通っても、壁画が完成することなく、途中で終わっていたからです。
何度も気になり、わざわざ見に行ったものです。
2013年に入り、車椅子の方にも、京都トラベラーズ・インでの宿泊やカフェ「グリーンボックス」をご利用いただきたいと思い、リノベーションを行うことになりました。
車椅子対応のトイレを作った時に、
入り口付近に、壁画が映えそうなサイズの壁ができることになり、
建築家の藤村正継氏と、岡崎、アート、壁画、などのキーワードを元に
アイデアを練っていた時に、ある事を思い出しました。
それは、徒歩で1分のところにある、国立京都近代美術館で、
2008年9月13日から11月9日にかけて行われた
「生活と芸術、アーツ&クラフツ展、ウイリアム モリスから民芸まで」という展覧会。
着物や帯の紋様や文様が、1900年前後にヨーロッパに渡り、
アール・ヌーヴォーのバックグラウンドに使われたり、
世紀末のウイーンでクリムトやミュシャに影響を与えたり、
また、イギリスでは、ウイリアム モリスデザインの生地や
リバティ プリントとして大流行したということをこの時知りました。
2009年1月6日から2月8日にかけて行われた、
「上野伊三郎+リチコレクション展 ウイーンから京都へ 建築から工芸へ」
という展覧会がありました。
そこで、京都にあった当時のスター食堂は、建築を伊三郎氏が、
内装のインテリアデザインを上野リチが手掛けていたということを知り、
近代京都のモダンデザインについての流れを知ることができました。
個人的な話になりますが、18年近く住んだ、アメリカ、サンフランシスコでも
京都由来のワコール、任天堂、宝酒造などの企業は大活躍されていて、
京都の持つエネルギーは、常に感じておりました。
それで、藤村先生に「壁画はどうですか」と言われた時に、
迷わず、あの踊る象のことを思い出したのです。
ホームページより、ご連絡してから程なくして、
先生側から、「オーナーと顔合わせをしてから決めたい」とのご連絡が入り、
先生、奥様、エレファントの山崎さんが来られ、
終始大爆笑のとても楽しい顔合わせとなりました。
その時に言われて、印象的だったのは、先生の作品である、青蓮院の蓮の襖絵と、
京都市動物園のゴリラの壁画との間の動線ができて、
具合が良いとおっしゃったことです。
また、海外に長く住んでいた人間と僕は、
結構気があうねんとおっしゃってくださって、ほっとしたことも覚えています。
唯一のお願いと先生に言われたのが、
「僕の絵は、はみ出るんやけど、ええか?」ということでした。
もちろん、喜んでOKでした。
全てお任せした結果、
パブリックスペースは、平安神宮の神苑から大鳥居を通って、
神苑にあるお花が京都トラベラーズ・インまで続いているという
イメージにしてくださいました。
タイトルは、J-Flowers。
京都の四季に咲くお花である、芙蓉、牡丹、椿、糸菊と、
お手洗いに各一箇所づつ、赤と青のダリアを描いてくださり、2014年2月に完成しました。
制作中の思い出は二つあり、
一つ目は、吉兆の方角から描き初められたこと。
モチーフは決まっているけれど、作品全体は、先生の頭の中らしく、
チームKi-Yanの皆さんはいつも1日目が楽しみだそうです。
もう一つは、私たちも壁画制作に参加させていただいたことです。
何人もの友人や、スタッフが参加でき、貴重かつ素敵な思い出となりました。
作品には、赤を基調とする部分が多くあったので、
中華圏の人たちから人気が出るのかなと思いましたが、
予想に反して、ロック好きのアメリカ人の友人を筆頭に
欧米の友人たちからファビュラスと言われました。
ロック音楽を中心としたイベントプロデューサーをされていた
先生ならではのエピソードだなと思います。
素晴らしいと言ってくださった方の中に、
シドニー在住のアーティストであるペニーさんという方がいて、
ベッドスプレッドもKi-Yan柄がいいんじゃないと、ご意見くださり、
先生の許可をいただき、2016年より洋室のベッドスプレッドは青のダリア柄を、
また、今年の3月より和室のお布団柄が糸菊模様になる予定です。
2017年2月のことになりますが、エレベーターがなく、
階段をゲストにお使いいただいている京都トラベラーズ・インでは、
階段を上り下りする楽しみを感じて欲しいとの思いで、先生にご相談させていただきました。
描きやすくするため、白のパネルを貼るか、壁自体を白く塗り替えるべきかと
ご相談させていただいたところ、
「このままでいい、やる気が湧いたから、スケジュール調整して前倒しするから」と、
急遽、翌週に制作してくださることになりました。
今回は、ちょっとした事情で、
建築家の岩田恵氏が各階のフロアイメージを作りましょうと
季節感のあるアイデアを出してくださったことで、季節がテーマとなりました。
1階から2階にかけては、春(春は光)、2階から3階にかけては夏(夏は水)、
3階から4階にかけては秋(秋は風)というタイトルをいただきました。
タイトルは、Ki-Yan作品初、フランス語のタイトルで、たまたま京都におられた、
村上春樹作品や平野啓一郎作品をフランス語訳されているコリーヌ アトランさんが
快くフランス語のタイトルに直してくださいました。
先生を通して、私の京都の世界もグッと広がり、感謝の念でいっぱいです。
J-Flowersを描いてくださったあとに、近くの岡崎の神宮道上がる下がる商店街でも、
わらび餅の峯嵐堂さんが壁画依頼をされ、新たな動線ができました。
余談ですが、京都トラベラーズインのスタッフの大叔父が、
先生が唯一師と仰ぐ、上野伊三郎氏と判明し、国立京都近代美術館での展覧会と、
先生の壁画との結びつきも判明致しました。
偶然は必然なんですね。
京都トラベラーズ・イン [ KYOTO TRAVELERS INN ]
〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町91-2
(平安神宮大鳥居東・美術館前)
電話番号:075-771-0225
HP:http://www.k-travelersinn.com/index.html
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